『星を編む』感想|『汝、星のごとく』が本当に完結する一冊

『星を編む』は、今年映画化される凪良ゆうさんの小説『汝、星のごとく』の続編です。

全3章で構成されており、その後の物語だけでなく、登場人物たちの過去や、それぞれの視点から描かれたエピソードも収められています。

この一冊を読むことで、『汝、星のごとく』では見えなかった想いや背景がつながり、物語が本当の意味で完結したように感じました。

『汝、星のごとく』が好きな方には、ぜひ続けて読んでほしい作品です。


『星を編む』はどんな物語?


構成

『星を編む』は三部構成になっています。

  • 第一章「春に翔ぶ」──北原先生の過去
  • 第二章「星を編む」──編集者たちの物語
  • 第三章「波を渡る」──暁海と北原先生、その後

それぞれ語り手や時期が異なり、『汝、星のごとく』では描かれなかった物語が少しずつ明らかになっていきます。


どちらを先に読むべきか

『星を編む』は続編ですが、本編では描かれなかった登場人物たちの過去や背景も描かれています。

単体でも読めないことはありませんが、この作品の魅力を最大限味わうなら、
『汝、星のごとく』を先に読むことをおすすめします。

まだ読んでいない方は、ぜひ『汝、星のごとく』読んでみてください。

▶︎関連記事:『汝、星のごとく』感想

すでに読んでいる方は、『汝、星のごとく』についての記事も、よかったら覗いてみてください。


内容紹介と感想

ここからはネタバレありの感想です。


第一章『春に翔ぶ』|北原先生の過去

私は『汝、星のごとく』を読んだときから、北原先生が大好きでした。

誰かが苦しんでいるとき、その人に本当に必要な言葉や行動を、とっさに選べる人。

優しくて、穏やかで、とても頼り甲斐のある存在です。

だからこそ、

「どうしてこんな人になれたんだろう」

「どんな人生だったんだろう」

と思っていました。

第一章では、教え子でもある明日見菜々との出会いから、結の父親になるまでの物語が描かれています。

切ない部分もありますが、この章を読むと、

北原先生が、なぜ他人の選択を正しい方向へ導けるのか。

その行動力の裏にある考え方が、少しずつ見えてきます。

また、どうしてそこまで暁海や櫂のために、親身になってくれたのか、その理由も少し理解できる気がします。

そして、『汝、星のごとく』では語られなかった北原先生と明日見奈々の関係が明らかになり、いくつか大きな誤解があったことを読者ははじめて知ります。

まず「生徒を妊娠させてしまった教師」という誤解を解かずにいたことに、驚きました。

北原先生は他人の誤解や思い込み、自分がどう思われるかということを気にせず、

「自分がどうしたいか」

「相手のために何ができるか」

ということをシンプルに考えられる人なんだなと、思いました。


「恵まれているから」という理由で、全てを飲みこまなくていい

この章で、一番心に残った言葉があります。

「与えられる『恵み』が、きみの望む『恵み』だとはかぎりません」

明日見菜々は裕福な家庭で育ち、周囲からは「何不自由ない人生」に見られていました。

そのため、自分の苦しみや願望を口にすることは、「贅沢なのではないか」と思ってしまいます。

「こんなに恵まれているんだから。」

そう思って、自分の本当の気持ちを飲み込んでしまうことはありませんか。

私は、明日見さんのような裕福な家庭だったわけではないけれど、
この言葉を読んで、同じような気持ちを抱いた経験を思い出しました。

でも、恵まれていることへの感謝と、自分が本当に望む人生は、本当は別の問題なんですよね。

私にとって、おまもりのような言葉になりました。


北原先生がもっと好きになる

そして何より嬉しかったのは、

北原先生にも、ちゃんと人間らしい一面があることが描かれていることです。

『汝、星のごとく』は、暁海と櫂が語り手で進行していき、北原先生についてはどんなときも冷静で、誰かのために行動できる人という印象が強くありました。

『春に翔ぶ』の中では、北原先生自身が語り手になることで、心の中を覗くことができます。

自分の幸せを願うこともある。

理不尽なことには怒る。

葛藤もする。

それでも相手を思いやり、自分にできることを考え続ける。

そんな一面を知ったことで、より北原先生が好きになりました。


第二章『星を編む』|編集者たちの物語

『汝、星のごとく』で櫂と尚人の漫画の編集者だった植木渋柿と、櫂に小説『汝、星のごとく』を書かせた編集者二階堂絵里の物語です。

最初は「編集者のサイドストーリーか。」と、正直少し意外でした。

でも、第三章まで読み終えたとき、この章があった意味がよくわかりました。

櫂を失ったあとも、彼の作品を未来へ残そうと奮闘する編集者たち。

作品を作るのは作家だけではなく、その作品を届けたいと願う人たちの情熱もまた、物語の一部なのだと感じました。

ふたりは『汝、星のごとく』ではそれほど深い交わりはありませんが、

『星を編む』では、櫂を失った悲しみや後悔だけではなく、
編集長としてのさまざまな苦悩や、仕事への情熱など分かち合えることが多く、
お互いに孤独を抱えながらも、励まし合って生きています。


瀬戸内海の描写

個人的にこの章では、初めて瀬戸内海を見た、編集者の植木さんの表現に惹かれました。

「ひどく静かだった。静かすぎて、なんだか不思議な気持ちだ。海とは絶えず波音がするものだと思っていた。
実際、ぼくはそういう海しか知らない。なのに、この海の穏やかさといったらどうだろう。
その底に感じる恐ろしほどのうねりまでーーー」

この文を読んだとき、一度立ち止まって想像を膨らませました。

私も海の近くで育ちましたが、まさに「海とは絶えず波音が響くもの」だと思っていました。

でも、凪いだ瀬戸内海は違う。

『汝、星のごとく』でも、島や瀬戸内の海の美しさは何度も丁寧に描かれています。

島の閉鎖された空気や、島から出たいのにさまざまな事情から抜け出せない苦しさとの対比も、
この作品の大きな魅力のひとつです。

その静けさを知らない私のような人の視点で描かれるからこそ、自分が見たことのない海への想像はさらに膨らみました。

いつか夕凪の瀬戸内海を、この目で眺め、静けさを肌で感じてみたいです。


第三章『波を渡る』|暁海と北原先生、その後

三章は、一番読みたかった章でした。

『波を渡る』は、まさに『汝、星のごとく』の続編で、暁海と北原先生の視点が交互に入れ替わり、その後の物語を描いています。

『汝、星のごとく』のラストは、美しいけれど切ない終わり方でした。

暁海にも北原先生にも、どうか穏やかな日々が訪れていてほしいと願う読者の方も多かったのではないでしょうか。

この章を読むと、とても温かい気持ちになることができます。


一緒にご飯を食べる幸せ

私は、小説の中で食事についての描写が好きなのですが、

この章の中でも、何度かふたりでご飯を食べる場面があります。

「おいしいねって一緒にご飯を食べられるのは、それだけで最大の幸せです」

暁海が、生姜の炊き込みご飯を作ると、

北原先生は「ぼくの好物です」と言います。

「だから作ったんです。」と返す暁海。

夏になると食欲が落ちる北原先生のために作ったご飯。

相手の好物を覚えていること。体を気遣うこと。

そして、「おいしいね」と言いながら同じ食卓を囲むこと。

そんな何気ない日常こそが、このふたりらしい穏やかな幸せなのだと思いました。

また後日、北原先生が、暁海が美味しそうにどんべいを食べる姿を

「なぜか、ぼくは、ちょっとおかしいほど幸せな気持ちで眺めた。」

と思う場面があります。

特別な出来事ではなく、ただ大切な人がおいしそうにご飯を食べている。

その何気ない時間に幸せを感じられるふたりの関係が、とても愛おしく感じられました。


「もう愛と名付けていいだろうか。」

『汝、星のごとく』では、暁海と北原先生は、お互いに恋愛感情はなく、「互助会結婚」だと語られています。

最初は本当にそうだったかもしれませんが、支え合って一緒に困難を乗り越えてきたふたりは、いつしか互いになくてはならない存在になっていました。

『波を渡る』の後半でようやく北原先生は、自分の気持ちと向き合います。

「ぼくと彼女の間にある温かく、けれど脆いなにかが、ぼくたちの手をつながせる。それをもう愛と名づけていいだろうか。」

周りの人たちはずっと前から気付いていたこと。

でも北原先生自身が、それをようやく受け止める。

その瞬間が、とても不器用で愛おしく感じました。


『星を編む』を読んだからこそ思うこと

『汝、星のごとく』は、映画のように美しく、切ない物語でした。

一方で『星を編む』は、その美しい物語に体温を与えてくれる作品でした。

登場人物たちの過去や、その後の日常が描かれることで、物語がより立体的になり

「ああ、この人たちは本当に生きていたんだ。」

そんな気持ちになります。

『汝、星のごとく』だけで完成された美しい物語だと思っていましたが、

『星を編む』まで読んで、ようやく本当に物語が完結したように感じました。

私の推測ですが、著者は、『汝、星のごとく』を書いている段階から、背景に『星を編む』の構想もあったのではないでしょうか。


『星を編む』はこんな人におすすめ

  • 『汝、星のごとく』が好きな人
  • 『汝、星のごとく』を読んで切なさを抱えたままの人
  • 暁海や北原先生に幸せになってほしいと思った人
  • 北原先生のことをもっと知りたい人

『汝、星のごとく』を読んだ方には、ぜひ最後まで見届けてほしい物語です。

▶︎関連記事:『汝、星のごとく』感想


『汝、星のごとく』&『星を編む』が好きな人におすすめの本

『暁星』/湊かなえ

『汝、星のごとく』感想の記事でもご紹介しましたが、この物語が好きな方には、ぜひおすすめしたい1冊です。

物語は、宗教団体と深い関わりがある政治家が殺害されることから始まる。
手記と、小説の2部構成になっていて、この小説の中でも「金星」はとても大切なテーマになっています。
母親が宗教にハマってお金を使い込んでしまう部分や、親に振り回されるこどもたちという点でも、『汝、星のごとく』との共通点があります。
この本を読むと金星に対して、さらに特別な感情を抱くことになると思います。

▶︎暁星についての記事はこちら


『わたしの美しい庭』/凪良ゆう

マンションの屋上庭園の奥にある「縁切り神社」。
そこを訪れる<生きづらさ>を抱えた人たちと、そのマンションに住む「わたし」の物語。

小学生の百音と統理はふたり暮らし。
朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。
百音と統理は血がつながっていない。
いろんな悲しみを背負ったまま、それでも軽やかに楽しく温かい愛を持って過ごしている登場人物たちがとても好きです。

個人的には三人でご飯を食べるシーンもお気に入り。


『Nのために』/湊かなえ

超高層マンションの一室で、そこに住む夫妻の変死体が発見された。
現場に居合わせたのは20代の4人の男女。
それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。

『汝、星のごとく』『星を編む』との共通点は、主人公が親の不倫に振り回されて家庭環境に苦しめられている点や、瀬戸内の島での閉鎖された環境、そこから男女2人は上京するというストーリーです。

ただ、似ているのはそこまでで、事件に関わるたくさんNたちの、どのNが、どのNのために、嘘をついたり行動したりしたのか考えながら読むのが楽しい純愛ミステリ作品です。

あまり情報を入れずに読むことをおすすめします。


まとめ

『汝、星のごとく』は2026年秋に映画化が決定しています。

『星を編む』のエピソードまで描かれるのかはわかりませんが、今からとても楽しみです。

『汝、星のごとく』は、美しくも胸が痛む切ない物語でした。

だから、続編で暁海はもちろん、大好きな北原先生が穏やかな日々を過ごしていることを知ることができて、本当に嬉しくなりました。

『汝、星のごとく』を読み終えたあとに残ったしっとりとした悲しみが、『星を編む』を読むことで、少しだけ救われたような気持ちになりました。

こんなにも温かい続編を書いてくださった凪良ゆうさんに、心から感謝しています。

そして、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

みなさんは、この物語のどのシーンが一番心に残りましたか?

よかったらコメントで感想を教えていただけたら嬉しいです。

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